日本の木版画の技術は、江戸時代の文化の中で独自に発展し、浮世絵という力強く華やかな芸術を生み出しました。「浮世」という言葉には「当世風の」という意味があり、浮世絵版画はまさにその時代と社会を色鮮やかに映し出すメディアでした。
写楽や歌麿、北斎の浮世絵を生み出したこの高度な木版画の技術は、途切れることなく、現代まで職人たちに受け継がれています。山桜の版木を使い、和紙に墨と水性の絵具で摺り上げることで生まれるシャープな線や軽やかな色彩は、唯一無二のものです。伝統の技術は、同時代の人々の心をとらえる作品を生み出し続けることで、さらに次代へと継承されていきます。
この展覧会は、伝統木版画の表現に魅了された様々なジャンルのアーティスト、デザイナー、クリエーターたちが、現代の絵師となり、アダチ版画研究所の彫師・摺師たちと協働して制作した「現代」の「浮世絵」をご覧いただくものです。
総勢85名のアーティストたちの木版画を通じて、現代から未来につづく伝統の可能性をご鑑賞ください。
本展第4章(2階展示室)の展示作品は、主にアダチ伝統木版画技術保存財団の「現代の浮世絵・国際創造プロジェクト」によって制作された木版画です。
同プロジェクトは、世界で活躍するアーティストの方々に伝統木版画技術を使った新しい芸術表現に挑戦していただき、伝統木版画技術のもつ唯一無二の魅力と現代における可能性を、展覧会等を通じて広く世界に伝えることを目的としています。